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会陰ヘルニア

① 会陰とは

会陰部とは左右の大腿と臀部で囲まれる骨盤の出口全体のことで、後ろからみると尾と坐骨に囲われた肛門周囲の領域を言います。

②会陰ヘルニアの概要

遺伝性およびホルモンの異常が原因として考えられているが7~9歳に発症ミニチュアダックス、チワワ、ボストンテリア、コリーに多いといわれています。

 

③ 症状

会陰部の腫大、しぶりおよび便秘が代表的な症状です。これらの症状は平均的には5~8か月前からあって、初めて病院に連れてくるといわれているほど、経過がゆっくりと長く続くものです。ゆっくりとしている一方、膀胱がヘルニア部に脱出すると、尿失禁、無尿および嘔吐と重篤な症状が急に見られます。またそれらに伴って全身的な症状、元気消失、食欲不振、脱水、血便、下痢などが認められるようになり、場合によっては腎不全などで命の危険性も高い病気であります。


 

④ 診断と治療

治すという意味では外科手術が唯一の治療法です。

またホルモン由来といわれているほど男性ホルモンの関与が疑われることから

去勢手術を一緒に行うことが重要視されています。

高齢であるとか、金銭的な問題などで対症治療として、下剤や浣腸、食事療法が選択されることもあります。

 

手術方法は多種多様で、

・あいた穴をふさぐように筋肉を縫う基本法

・筋肉の向きを変えて穴をふさぐ筋転移法(いろいろなところの筋肉を使う方法が存在)

・人工材料もしくは生体材料で穴をふさぐ方法

などがあげられます。

いずれにしてもヘルニアの状態(重症度)や術者の各手術の習熟度、起こりうる合併症を考慮して

手術方法が選択されます。

全般的に見ても他の手術に比べ再発率が高い病気といってよいでしょう。

そのため、手術した後の食事療法、体重制限、運動制限が必要になります。

 

 

IMG_0957.jpg  

↑これは左側の会陰ヘルニアです。

上に見えるのが糸で縛った肛門です。

金属のはさみでつままれたものがガーゼで、このスペースが空いてしまっているのです。

IMG_0959.jpg

↑穴をふさいだ後です。

この手術は去勢手術した後に必要なくなった総鞘膜という精巣を包む膜を利用した手術です。

(人工のものをつかうよりももともと自分の体のものを使ったほうが安全で副作用が出ません!)

 

 

 

 


椎間板ヘルニア

① 椎間板

犬の背骨は、椎骨という骨がたくさん連なってできています。首の椎骨は頚椎といい、その後ろに胸椎・腰椎・仙椎・尾椎と続いていますが、どの犬種でも通常頚椎は7個、胸椎は13個、腰椎は7個あります。これら椎骨と椎骨の間には、背骨を曲げるためのショックアブソーバー(位置の移動を抑制するための装置)がありますが、これを「椎間板」といいます。また、椎間板は円板状で、その中心は髄核、周囲は線維輪とよばれます。

② 椎間板ヘルニアの概要

ヘルニアとは、体内の臓器などが本来あるべき部位から脱出した状態を指します。例えば、お腹の筋肉の隙間から脂肪や消化管(腸など)が飛び出したものは「臍ヘルニア」と呼ばれますが、これをいわゆる「でべそ」といいます。また、頭の中で脳圧が亢進し、脳が本来あるべき部位から圧迫され、押し出されてしまったものを「脳ヘルニア」と呼ばれます。
椎間板ヘルニアは、脊椎と脊椎の間に存在し、クッションの役割をしている「椎間板」がある原因で正常な位置から逸脱し、その脊椎の中を通る脊髄を物理的に圧迫する状態をいいます。神経が圧迫されると脳からの運動指令が圧迫された場所でとぎれてしまい、正常に体を動かすことが難しくなります。病変の場所や圧迫度合いによっては、歩けなくなったりおしっこすることができなくなったりします。
 椎間板が変性する原因ははっきりとはわかっていませんが、ミニチュアダックス、ウエルッシュコーギー、ビーグルといった、いわゆる軟骨異栄養性犬種が非常にかかりやすいといえます。

③ 症状

椎間板ヘルニアは神経学的な症状によって、だいたい3~5段階に分別できるといわれており、初期症状では、なんだか元気がない、抱き上げた時に「キャン」と鳴いた、動きたがらない、普段は登れる段差が登れない等が挙げられます。
 中等度症状では、腰がふらふらする、歩いてはいるが足を引きずる、背中を触ると痛がる、または怒る。重症症状では、後ろ肢は動くが体を支えられず歩くことができない、後ろ肢で全く立てない、おしっこが出ない。随意運動不能状態では、立てなくなる、後ろ足が動かせない、腰から下の感覚が鈍っている状態、自分で排泄できなくなる、オシッコをしたことに気づかない、後ろ足が完全に麻痺した状態、痛みも感じなくなる。
 これらの症状があった場合でも必ずしも「椎間板ヘルニア」とは限りません。大事なことは疾病の鑑別であり、その疾病に対し迅速で適切な治療をすることです。しかし、犬の椎間板ヘルニアは、場合によって脊髄軟化症という状態に進行し、命を失うこともありますので、早期の適切な診断・治療が大切です。

④ 診断と治療

 

 

アリスちゃん

深部痛覚という痛みの感覚が全くない状況で手術しました。非常に治療反応がよく、股関節もわるいのでうさぎ跳びみたいになりますが、足を使えるようになってます!

 

 イチローちゃん

急に立てなくなり痛みも感じなくなっていたので緊急手術を実施しました。
翌日はまだ足が動きません。

 

 11日経過した頃です。非常に速い回復で歩けるようになりました!

 

 トトちゃん

手術1週間後の状態です。立てなくなってから手術しましたが、何とか歩けるようになっています。

 

 同じ日の別の動画です。


前十字靱帯断裂

① 前十字靱帯断裂の概要

前十字靭帯は膝にある重要な靭帯の一つで、人間ではスポーツ選手が傷めてしまうことが多い靭帯です。前十字靭帯断裂は、動物では特に犬に多く発生し、骨の形態(骨のかたち)や靭帯の変性性疾患(靭帯の強度が低下してしまう)である場合が多く、性別や年齢、品種に関わらず損傷を起こす可能性があります。
全ての犬種と年齢ともに起こりうる病気であり、肥満や老齢化による靭帯の脆弱化、膝蓋骨脱臼などを基礎疾患として持っている犬が、急ターンや転倒、ジャンプなど、膝関節に急激な負担をかける動きをすることで多くは発症します。
運動後の突然の後肢跛行や挙上として認められることが多く、触ると嫌がり強い痛みを訴えます。2~3日の経過で痛みは緩和され、一見よくなったように見えますが、そのまま慢性化してしまうと、半月板損傷や変形性膝関節症、慢性関節炎を起こしてしまいますので早期の診断が必要となります。

② 症状

ひざにある前十字靭帯(大腿骨とすねの骨をつなぐ靭帯)が切れて、ひざに体重がかけられないのであれば、前十字靭帯断裂であるといえます。また、痛みで歩きづらそうに後ろ足を上げることに加え、引きずることや地上にちょっとだけ足をつけて歩くようになります。
この症状が急性のものであれば、多くの場合、数日で元通り歩けるようになりますが、慢性化すると特に運動後に足をひきずることが多くなります。また、骨関節炎(変形性関節症)をともなうこともあります。
前十字靭帯断裂にかかりやすい犬種は、4~5歳以下の大型犬や肥満している犬、例えばラブラドール・レトリーバー、ロットワイラー、チャウチャウ、ニューファンドランドなどが挙げられます。

③ 診断と治療


胆嚢粘液嚢腫

① 胆嚢粘液嚢腫の概要

胆嚢粘液嚢腫は、過剰な粘液の蓄積により胆嚢が拡張し、総胆管の閉塞や胆嚢の破裂を起こしてくる胆嚢の病気です。胆嚢とは、肝臓で絶えず造られる消化液(胆汁)を蓄える袋状の器官であります。
物を食べるとあるホルモンの作用によって胆嚢が収縮し、これにより胆嚢内に溜まった胆汁が総胆管という管を通って十二指腸に吐き出されます。分泌された胆汁は、膵臓の消化液などと一緒になり、食べ物中の脂肪分を消化吸収されやすいよう乳化する役割を担っています。ところが、何らかの異常で胆嚢内に胆汁成分が変質して結晶化したもの(胆石症)や、胆汁成分が変質して泥状になったものがたまる(胆泥症)ことがあります。
胆石や胆泥が溜まっただけで、すぐに何らかの症状が現れるわけではないです。しかし、ベースにある胆嚢炎がさらに悪化することや、胆石や胆泥が胆嚢から出て総胆管をふさいだりすると、元気や食欲がなくなったり、嘔吐が認められたり、さらに重症の場合には黄疸が現れます。

② 症状

胆汁を十二指腸に分泌することができなくなり、消化不良や胆汁色素(ビリルビン)の不足により、ウンチの色が白っぽくなったりします。また、胆汁が排せつされないため、肝臓内や全身に胆汁がたまり、進行すると体が黄色くなる「閉塞性黄疸」を起こします。    
それと同時に胆嚢自体も腫れてくるので、最悪の場合には、胆嚢が破裂し、腹腔内が汚染されて、臓器が傷むことで腹膜炎を起こすこともあります。原因などは、まだまだ分っていないことが多い病気ですが、胆嚢の運動低下、高コレステロールなどによると考えられています。
黄疸や肝酵素の上昇、胆嚢破裂などで多くは見つかりますが、昨今では、健康診断や何かの検査の際に見つかり、無症状の際に見つかることが多くなりました。症状がなくても注意深い定期観察を行い、肝酵素の上昇や症状が見られてくると手術が必要になります。

③ 診断と治療


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