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リンパ腫

① リンパ腫の概要

リンパ腫とは、白血球の中で免疫に関わる働きをするリンパ球(全身のリンパ節、リンパ組織あるいは肝臓や脾臓などの臓器)が腫瘍性に増殖する悪性腫瘍性疾患です。リンパ腫は、造血系(血液系)の悪性腫瘍で約90%を占めるもっとも発生の多い腫瘍といわれております。
体のほぼ全ての組織に発生する可能性があり、発生する部位によってはいくつかのタイプに分類されています。列挙しますと、全身のリンパ腺が大きく腫れてくる「多中心型リンパ腫」、皮膚病変として現れてくる「皮膚型リンパ腫」、胃や腸管に出てくる「消化管型リンパ腫」、胸の縦隔という部分の「縦隔型リンパ腫」、腎臓や眼、鼻咽頭、神経にできる「節外型リンパ腫」などのです。
 犬では原因はまだ確認されていませんが、特定の品種に多発するため遺伝的素因が関連しているという仮説が立てられます。他方で、猫では猫免疫不全ウィルス(猫エイズ)や猫白血病ウィルス等のウィルス感染や犬同様に遺伝的素因、その他様々な原因によって起こります。

② 症状

リンパ腫は腫瘤をつくる場所によりいくつかの型に分かれ、症状もそれぞれ違いますが、だいたい4つぐらいに分類されるといわれております。まずは多中心型といって、全身のリンパ節が腫脹したり、肝臓・脾臓・骨髄などが侵されます。また全身もしくは局所の浮腫や、病変の存在する臓器の機能異常がおきます。
 次に、消化器型といって、胃や腸に腫瘍ができるため、食欲不振や嘔吐、下痢などの消化器症状をおこします。さらに縦隔型といって、右肺と左肺の間にある縦隔とよばれる部分のリンパ節の腫脹によって胸水が貯留し、呼吸困難や発咳を引きおこします。最後に、節外型といって、腎臓・神経・鼻咽頭・眼など様々な組織や器官が侵され、症状は侵されている臓器や器官によって異なります。主に腎リンパ腫では、腎不全による食欲不振や嘔吐、鼻咽頭リンパ腫では、くしゃみ・鼻汁・いびきのような呼吸・顔面の変形など、皮膚のリンパ腫では始めは、脱毛や痒み・発赤など様々な症状がみられます。
ゴールデン・レトリーバー、ラブラドドール・レトリーバー、ビーグルなど発症しやすい犬種が知られており、遺伝的要因が関係している可能性があります。

③ 診断と治療


血管肉腫

① 血管肉腫の概要

血管肉腫とは、血液を介して皮膚や、心臓や脾臓などの内臓に転移するがんです。また、血管の内皮細胞より発生する悪性腫瘍で、犬の悪性血管内皮腫とも呼ばれ、肉腫として発生するだけでなく、血管腫の悪性化としても発生します。
犬の血管肉腫の好発部位は内臓(脾臓・心臓等)と皮下組織と言われていますが、血管が存在する全身の組織(骨・中枢神経・鼻腔・口腔・膀胱等)にも発生します。犬の血管肉腫の発生平均年齢は9~10歳でシェパードによくみられ、オス犬のほうが発生率は高いようですが、短毛で皮膚組織のない犬種の腹側腹部や陰嚢の皮膚に高頻度に発生するようです。全体的に、ダルメシアン・ビーグルなどは本肉腫の皮膚発生リスクが高いと言われています。

② 症状

症状としては、皮膚の場合は、硬く血豆のように赤味を帯びたしこりができるのが特徴です。犬の血管肉腫の転移は、急速で血行を介して肺・肝臓・心臓・大網膜・筋肉・脳などへ起こります。発症部位により異なりますが、咳・呼吸困難や食欲不振等様々な症状があります。
また、内臓に発症する場合は、体重が減少し、腹部が大きくなることもあります。筋肉に血管肉腫ができた場合は、足がむくんだり、筋肉が硬くなったりします。

③ 診断と治療


肥満細胞腫

① 肥満細胞腫の概要

肥満細胞とは、皮膚の血管や筋肉の周辺、内臓の周辺など、体中の組織に散在している細胞で、骨髄で作られ全身の結合組織で成熟します。この細胞は虫刺されや花粉など、外部から動物の体に侵入する異物を感知すると、ヒスタミンやヘパリンと呼ばれる生理活性物質を放出し、患部に炎症を起こして免疫機能を高め、その異物を退治したり、鼻水を流させて体外に押し出したりして、動物の体を守る重要な働きをしているものです。
肥満細胞腫は、性差別はなく雑犬種に最も多くみられ、発生年齢は3週齡から19歳までと幅広く、平均年齢は8.5歳といわれております。犬によくみられる腫瘍で、その発生率は犬の皮膚腫瘍・皮膚癌の13%に当たります。腹部・脾臓・肺・肝臓・腎臓・胃腸・咽頭・リンパ節・骨髄等のあらゆる部位に発生し、その約90%は皮膚や皮下組織に発生します。

② 症状

犬の腫瘍の中で、乳腺腫瘍に次いで多いのが皮膚腫瘍であり、その皮膚腫瘍のなかで最も多いのが肥満細胞腫です。症状は様々で、皮膚のどこかにしこりができ、そこから出血したり、蚊に刺された跡みたいに皮膚の一部が赤く腫れていたり、一方では見上、ほとんど判別できなかったりします。よって、犬をなでていてどこかに「しこり」や「腫れ」のようなものに触れる時がありますが、その際「オデキか虫刺されか」と安易に考えず、肥満細胞腫と疑い、動物病院でよく調べてもらうことを勧めます。
また内臓など、体内の肥満細胞が腫瘍化すれば、嘔吐や下痢、食欲不振が続いたりすることもあります。脾臓や腸管などに大きな腫瘍ができれば、ヒスタミンがたくさん放出されて胃潰瘍になることや、出血によって貧血状態になることもありますので、もし性質が悪いものであれば体のあちこちに転移して助からないこともあります。

③ 診断と治療


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